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■退職金と就業規則

 そもそも退職金の支給に関して明確に定めた法律はありません。つまり、退職金の支給は、賃金と異なり、事業主に義務づけられたり、強制されたりしているというものではないのです。退職金は労働基準法等では、定めをする場合には、必要な事項を定めなければならないとされています(相対的必要記載事項)。

 この定めは具体的には就業規則を通じてなされるのが原則です。したがって、就業規則等に退職金に関する定めをしなくても法的には問題ありません。しかし、逆に就業規則に退職金に関する定めをすれば、その内容に応じた退職金の支給をしなければならないことになります。なお、就業規則に定めていなくても、過去に退職金を支払った事例があるなど、一定の基準で支払う慣行があると考えられる場合は、退職金を支払う義務があるという判断が過去の判例で出ています。

 退職金の定めをするときには、法で定めることとされていることを定めるのは当然ですが、トラブル防止のために留意するものとしては以下のものがあげられます。

・退職金の目的を明確にする

 退職金は定めるも定めないも自由ですから、もし定めるのであれば、何のために定めるのかという目的を明確にする必要があります。そして、目的が違えば当然どのような制度にするのかは違ったものになるはずです。例えば、長年の功労に報いることを目的とするのであれば、勤続年数が長ければ長いほど有利になるような制度設計をするというような具合です。

・適用範囲

 就業規則はその事業所に使用されるすべての従業員を適用対象にするのが原則です。したがって、就業規則の中に規定されている退職金に関することもすべての従業員に適用されるのが原則になります。しかし、退職金の支給については、一部の従業員のみに限定する場合が多いと思います。例えば、正社員だけとか、勤続年数が一定年数以上の者とかという場合です。もし、このようにしたいのであれば、適用対象となる従業員が誰なのか(あるいは、適用除外する者の範囲)をきちんと特定できるような規定を盛り込むようにしなければなりません。

・資金準備変更による就業規則の変更


 退職金に関する規定があるということは、会社にとっては従業員が退職することで現金の支払いが発生することを意味します。この支払いのためには一時に多額の現金が必要になることが多いため、その資金準備に金融資産商品を利用して平準的に準備する場合が多いようです。何らかの要因で、この資金準備に関して変更が生じた場合、それに応じて就業規則等も変更する必要があります。あくまでも退職金の支給の根拠は就業規則等の規定であるということです。例えば、退職期の資金を生命保険商品を利用して準備していたところ、何らかの都合で廃止することとなった場合、その保険契約を解約するだけでは不十分で、就業規則等の規定を変更しなければ退職金を廃止することにはならないのです。

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